古いお寺の敷地内を歩いていると、境内の片隅に取り壊された家の痕跡が残っていた。礎石だけが露出していて、そこから古い柱や瓦が半分埋まった状態で出ていた。不思議と違和感はなく、むしろ自然なことのように感じられた。近づくと、瓦の下から白い紙束が見えた。手に取ると、それは誰かの手紙や日記のようだった。文字は読めなかったが、ページをめくるたびに、家の中の風景が脳裏に蘇るような感覚があった。お寺の鐘が鳴り始めると、その家の輪郭がぼんやり浮かび上がり、壁や屋根が半透明に見えた。家と寺が同じ時間軸に存在しているような奇妙な重なり方だった。やがて光が強くなると、すべてが消えた。