地下鉄のホームにいた。電車は来ていなかった。ホームの端に立つと、線路の上に水が流れていた。水は透明で、底に無数の硬貨が沈んでいた。硬貨は光を反射して明滅していた。隣に誰かが立っていた。その人は顔がなかった。顔のない人が私の方を向いていた。駅のアナウンスが聞こえた。言葉は理解できなかった。ホームの照明が一度だけ消えた。消えている間に、線路の水が上昇し始めた。明かりが戻ると、水はもう消えていた。硬貨も消えていた。顔のない人も消えていた。私は一人だった。電車が来た。扉が開いた。乗らなかった。