静寂に包まれた古い図書館で、私は一冊の本を開いていました。ページをめくるたびに、文字が音になって流れ出す──雨のようにしとしとと、耳に優しく降り注ぐのです。その音色は銀色で、光を反射させながら床に積もっていきました。やがて積もった音は深い霧となり、私の足元から膝へ、腰へと静かに上がってきます。本の中から浮かぶ景色は、どこか懐かしい季節の風景でした。触れると絹のような温かさを持つその霧の中で、私はただ静かに立ち尽くし、言葉にならない何かを感じていたのです。目を覚ますとき、耳に残る雨音は、もう聞こえませんでした。